14.決意















!注意!

元々R15のシリーズですが、今回少々R15からはみ出しかけています。性描写が。
大体R16くらいでしょうか。
直接的な描写は極力カットしておりますが、危険な香りはいつもより濃厚です。
ちなみに、骸でもツナでもなく、白蘭が危険です。
ほんのちょこっとでも受けっぽい白蘭に嫌悪を抱く方は、申し訳ありませんが前半を飛ばすかこの話そのものを飛ばして下さい。ストーリーがわからなくなるという心配はもちろんございますが、あらすじにするにはちょっと……なので、その予定はございません。申し訳ありません。




















 その日の夜。
 骸の隣に眠っていたはずの白蘭はそっとベッドから降りて、隣の部屋へと向かった。
「……」
 気配でそれを察知して、骸はゆっくりと目を開ける。最初からそのつもりで、骸はずっと起きていた。いつもより険しい母の嬌声をなんとか聞き流し、ずっと白蘭を窺いながら。
(白蘭……やはり……)
 ようやく動いた白蘭を追って、骸もまたひそやかにベッドを降りて歩き出した。元々幻覚で保っている身体なので、足音を殺すことなどたやすい。白蘭の短い足取りをそのまま追って、隣室の扉にそっと耳を寄せた――。

「……ぁ……っ……っ!」

 ベッドの軋むギシギシという音にかすかに弾む声が混じり、予想していたとはいえ骸の身体は強張った。その声は、毎日聞いている声――白蘭の、声だった。ずっと一緒に暮らしてきたのだ、間違えようもない。ただ少し聞いたことのない類の声だっただけで。
 それから、もうひとつ。

「もっと……く、振れ。そ……い子だ……」

(……あの、男……!!)
 途切れ途切れに聞こえる声もまた、聞き覚えのあるものだった。それを聞くだけで骸の中で何かが暴れ狂う。嫌悪ばかりが溢れてきて、耳を塞ぎたくてしょうがない。
(白蘭に何をしている……!)
 耐えきれず、感情のままにノブに手をかけようとして、その前にノブが勝手に回った。
「っ!?」
 外開きの扉から出て来たのは、一糸纏わぬ母だった。散々犯されたのだろう、まともに動かぬ身体を無理に引きずって、室内から目を背けるように顔を伏せていた。こちらにはまだ気付かない。でもそんなことよりも、骸の目を引くものがあった。
 母の、背後。小さな隙間から見えた情景は。

「あぁぅっ……うぁっ! ぁん……ぁあああっ!」

 そこにあったのは、目をきつく閉じて自ら腰を振る白蘭と、白蘭の白い身体とグロテスクに結合して恍惚の表情を浮かべる父の浅ましい姿だった。飛び散る汗がやたらとゆっくりと見えて、時間の感覚がなくなる。スロー再生のような情景の中、兄は甲高い声を上げて乱れ、弟とはまるで別の世界の住人のよう。いや、実際別の世界に生きているのだ。少なくとも骸の目にはそう見えてしまった。決定的な壁がみるみる積み上がり、透明なのに強固で厚い隔たりが生まれる。手を伸ばしても、決して届かない。
(なん、で……?)
 何なんだ、これは。
 あれが白蘭?
 いや、違う。そんなはずがないんだ。
 違う、はず……。
 じゃあ、そこにいるのは誰。

 ぱたん……

 申し訳程度の音とともに、その光景は封印された。壁はまだ、そこにある。
「……骸っ?」
 今更気付いて、母は小さく引き攣った声をあげた。骸は目を見開いたまま、どうすることも出来ずに立ちすくむしかなかった。本当は、飛び込んで父を殺してやろうと思っていた。エストラーネオには骸や白蘭のデータがある。彼らは骸たち兄弟がただならぬ恨みを抱いていることをよく知っているため、ひょっとしたら何らかの対抗策を作っているかもしれない。きっと狙われたら逃げ切れないだろうけれど、それでも白蘭に手を出したのなら許すわけにはいかなかった。なのに、その光景はそういう細かいこと全てをあっさりと塗りつぶして握りつぶしてしまった。根底から、覆ってしまった。
 思えば、白蘭が抵抗出来ないはずがないのだ。それをせず、深夜に呼ばれもしないのに自ら出向き、自ら父と繋がっていた。その時点で、もう……。
「骸、ごめんね……ごめんなさい、ごめんなさいね……」
 母に抱きしめられる感触の中で、骸は意識を手放した。













 朝になって目覚めると、骸の隣には当たり前のようにごくごく日常的に白蘭が眠っていた。少し動けば容易に口付けられる距離に無邪気な寝顔が横たわっているのだ。
「……白蘭……」
 けれど、すやすやと安らかな寝息をたてる寝顔と、昨夜の淫らな泣き顔とが重なって見える。痛みなんて感じないはずなのに、すきりと頭が痛んだ。いつからあんなことをしていたのだろう。こんなに傍にいて長いこと気付かないなんて有り得ないから、つい最近だろうか。ひょっとして、離れ離れになったあの時から?
 なぜ?
「……」
 考えても考えてもわからない。理解出来ない。そんなこと、あってはならないはずなのに。
「……白蘭。どうして?」
 
 問いかけに答える声はない。













「……」

 深夜、白蘭はぱちりと目を覚まし、出来るだけ静かにベッドを降りようと身体を起こし――唐突に腕を引かれた。
「わっ……!?」
 思いの外強い力にバランスを保つことなど出来ず、白蘭はころんとベッドに倒れ込んだ。

「どこへ行くんです、白蘭」

 静かな、しかしただならぬ圧力を含んだ声音に、白蘭はびくりと身を縮めた。
「む、骸君……!」
 鼻と鼻が触れ合うほどの距離に、冷たい微笑をたたえた骸の整った顔があった。その瞳はどこまでも深く、真っ直ぐで。白蘭は思わず目を逸らす。
「どこへ行くんですか、と聞いているのですが」
 ゆっくりと言い直されて退路を断たれたような気分になった。いや、実際退路なんてはじめからない。わかっているけれど、それでも白蘭は逃れねばならない。それだけの理由を秘めているのだから。
「……トイレだよ。何、骸君もついて来たいの? 狭いからやめときなよ。オススメしない」
 白蘭は不敵に笑って見せたが、骸は眉をぴくりとも動かさず、じっと目を合わそうとしない白蘭を一方的に見つめ続けた。ほとんど睨んでいるに等しいほど、眼光が鋭い。
「僕の目を見て言えたのなら、やめてあげてもいいですよ」
「っ……何、言ってんのさ。そんなの、別に――」
 無理矢理目玉を動かして骸の目をなんとか見つめて、そして、ぎしりと身体を軋ませた。
「な……にっ?」
 いや、軋むどころか、手足に関しては全く動かせない。顔面や指先くらいならなんとかなるが、およそ移動するのに必要な部位は動かない。
「完全ではありませんか。やはりあなたは暗示にかかりにくいようですね、白蘭」
 微笑を苦笑に変えて、骸は異質な瞳で白蘭を射止め続ける。少しでも目を逸らせば、すぐにでも呪縛は解けてしまうから。
「なん、で……!? は、なしてよ……骸、君!」
 白蘭は弱々しくもがくも、抑えられた力では骸の手から逃れることなど出来ず、菫色の淡い瞳は二色の鮮やかな瞳に搦め捕られてしまう。骸の能力を失念していたわけではなかった。ただ、まさか骸が自分に対して能力を行使するとは思ってもみなかっただけで。
 信じられない。その一念だけが白蘭の中を回っていた。
「いいからこのまま眠りなさい。別に何もしやしません。ただ一晩ここにいるだけでいい。いつも通りでしょう?」
 骸は白蘭を捕らえていない方の手で白蘭の柔らかな髪を撫で、そっと囁いた。しかし白蘭は険しい表情で必死さを増す。
「はなっ、してよ! お、願い……だから……っ!」
「どうしてそこまでして逃れようとするんです? 傍に居てほしいと言っているだけなのに、どうして……?」
 ぐ、と骸の手に力が篭る。常人なら骨が折れているだろう力に、白蘭は喉の奥で悲鳴をあげた。
「痛い、よっ! お願い、骸君、離して……離してっ!」
「離してほしいなら振り払えばいい。いっそ僕の腕ごともぎ取ってもいい。本気のあなたならそれくらい簡単でしょう?」
「っ……そ、んなこと……」
「おや、出来ませんか? なら、このまま朝までこうしていなさい」
「そ、れはっ」
「それも出来ないと? あなたは一体何がしたいんでしょうね。僕には理解出来ない……そう、理解出来ないんですよ、白蘭!」
 骸は浴びせるように声をあげて、白蘭の腕を引き寄せて迫った。その表情はいっそ悲愴で、白蘭は思わず息を呑んだ。
「認めたくないけれど……っ、今の僕には、あなたの本心がわからないんです!」
「む、くろ、君……」
「だから教えて白蘭! どうして、あんな……っ」
 骸は耐え切れないというように視線を逸らし、それで白蘭にかけられていた暗示は呆気なく解けた。しかし白蘭は骸の手を振りほどくことなんて出来るはずもなく、ましてやもぎ取るなんて考えられず、白蘭もまた目を背けて瞼を揺らした。そしてゆっくりと息を吐いて、搾り出すように喉を震わせる。

「……理由なんて、ないよ」

 その言葉に骸は眉を寄せ、きつくきつく、瞳が潰れるほどきつく目を閉じた。白蘭の表情を見て真意を探るべきだとわかっていたけれど、心が拒否していた。
 もし、白蘭の瞳に嘘がなかったら。
 その時はどうすればいい?
 同じであるために、理解するために、僕もまたあの男に抱かれろと?
 あの男に媚を売って、醜悪な汚物を銜えて泣き叫べと?
 そんなこと、出来ない。骸は視線を合わせぬまま、握った拳をベッドにぐっとめりこませた。
「……なら、好きにすればいい」
 低く小さな声は諦めを含み、ただ虚しさを引き立てた。骸は諦めたのだ。今までずっと暗黙の了解のように二人の間を結んでいたはずの、共通の願いを。
「……ごめんね」
 白蘭は痛む右手で俯く骸の頭を軽く撫で、ベッドを降りた。振り返ることなくドアまで歩いてノブに手をかけた。と――
「……白蘭」
 ふいに声をかけられ、くるりと振り向く。また暗示をかけられるのではないかだとか、そんな心配はかけらも過ぎらなかった。
 骸はベッドの上で顔を背けたまま、小さく口を動かした。
「……痛くして、ごめんなさい」
 その言葉に白蘭は苦笑した。きっと骸の方が悲痛な顔をしているのに。嘘が得意な骸は、白蘭には嘘をつかなかった。嘘をつく意味がないから。それに白蘭がどれだけ救われているかなんて、知らないのだろう。
 すれ違った視線のまま、白蘭は無理矢理微笑んだ。

「良い夢を、骸君」



 ぱたん



 呆気なく白蘭の姿は見えなくなった。
「……夢なんかに興味はない。僕が欲しいのは、現実だ。夢みたいに幸せな、現実……」

 そのために、すべきことは――。

 骸もまた静かにベッドを降り、白蘭とは逆に庭へ続く窓へと向かった。























「こんな時間に何用か」
 守衛の一人が骸に気付き、警戒心もあらわに立ちはだかった。しかし骸は静かな微笑を浮かべ、二階に位置する綱吉の部屋に視線を送った。
「危害を加える気はありません。ただ、綱吉君に――」


 別れの、挨拶を。
























白蘭にごめんなさいと言うしかありませんね……。
話の流れからして、白蘭には白蘭の考えがあることはおわかりかと思います。その上で『いつかの〜』の方が成り立っているわけです。
とにかく、なんとなく予想がつくかとは思いますが、『幼き〜』の方では、本気で白蘭が報われません。白蘭にとってはある意味バッドエンドと言えます。そこらへんをご理解いただいた上で最後まで読んでいただけますと嬉しいです。


2008.10.30




次へ


楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル