04.嫉妬
ツナ君の家にお呼ばれされるようになって2ヶ月が過ぎた。相変わらず僕らの家には気持ち悪い監視がついてるけれど、もうツナ君の家で遊ぶ分にはあのジジィの監視がつくこともなくなって、いたって平和だった。結構あっという間だった気がする。僕がそう思ってるってことは、骸君もそう思ってるってこと。
それは、別にいいんだけど…。
「クフフ、綱吉君は字が書けないんですね」
「じ、じぶんのなまえならかけるもん!」
「ひらがな限定でしょう?」
「…ゲンテイってなに?」
「クハっ、お馬鹿ですねぇ」
…なんでそんなに優しく笑うの、骸君。
「し、しょーがないだろっ! まだおそわってないんだから〜!」
「クフフ、僕が教えてあげますよ。まずは僕らの名前くらいは書けるようになって下さいね」
「う、うん、がんばる」
「ほら、ペン持って」
…なんで、ツナ君に触るの。
「こうで、こう。そう、それからここに点を2つ。そう、それが『六』ですよ」
「おお〜!」
「次は少し字画が多いですが、こうです」
「ふんふん」
「そうしてこうして、それから最後にのばして、これが『道』」
「む、むずかしいよ…」
「クフフ、『骸』はもっと難しいですよ。ああ、『蘭』も難しいですね。諦めます?」
「う…が、がんばるっ」
「そう、その調子です」
…なんで、そんなふうにツナ君を撫でるの。
人に触るの、嫌いだったでしょ。触られるのも、嫌いだったでしょ。
「こ、こう?」
「そうです。それが『骸』ですよ。見ないで書けるように練習して下さいね」
「うん!」
「次は白蘭ですね。…白蘭? どうかしましたか?」
どうかしたか、だって。
僕と君は同じなのに、わからないのかな。君がツナ君の方ばかり見てるからだよ。
僕を見てよ。
「びゃくらーーーふっ…ん…」
不思議そうに首を傾げた君の唇を、塞ぐ。
温かい。
でも、それが嘘だってことを、僕は知ってる。本当は冷たくて冷たくて、血なんて通ってないことを、よく知ってる。
知っていて、唇を重ねてる。従順な君の隙間から舌を差し込んで、思うがままに貪ってる。
ツナ君はただ知らないだけだよ。
「んっん…ぅ…」
だから見せ付けるようにキスしてやった。
「ふ……ん…はぁ…」
ちらりとツナ君を見たら、案の定カチコチに固まってた。目が点ってこういうことを言うんだろうな。
これでわかったよね、骸君。君には僕だけだよ。
ね?
「ん…む、くろ…くん…?」
…なんで、僕を見てないの?
何を見ているの?
どこを見ているの?
どうしてそんな、何も感じてないみたいな顔するの?
…ツナ君がいるせい?
胸の中がもやもやした。別に単なる暇つぶしだったんだし、ツナ君、処分しちゃおっか。
いいオモチャではあったけどね。
「…白蘭」
骸君に、いきなり手を掴まれた。
え、なに?
やめろっていうの?
なんで?
わけわかんないよ?
…………いや、そうじゃないね。
骸君と僕は同じなんだ。
骸君がそうしたくないって言うなら、僕自身もそうなんだ、きっと。
「…わかってるよ、骸君」
だから、そう言った。
うん、骸君のことなら何だってわかってるよ。本当だよ。
愛用のオモチャを手放したくなくなっちゃっただけだよね。
うん、いーよ。壊れるまで遊ぼう。
壊れたら別のを探せばいいもんね。
骸君は何事もなかったかのようにツナ君の方に向き直って、呆然とするツナ君にまた字を教えようとしてる。
…オモチャで遊ぶのもいいけど、1番の遊び相手を忘れないでほしいな。
少し視線に力が込もっちゃった。そしたら、骸君がちらりと紅い眼を向けてきた。
…なんでもないよ。
はい、新シリーズの片割れです。
書いてて楽しいのはやはりこっちサイドですが、こちらは過去のことなので最後はもう決まっています。『いつかの〜』の方を読んでくださればわかりますが、待ち受けるのは結局のところ別れです。それは変わりません。
この時点で既に白蘭が少しかわいそうですね…。
2008.8.17
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