01.再会
思えば、今日という日はどこかいつもと違った気がする。
「骸〜! 早く早く!」
まず第一に、骸が起きた時には既に綱吉が玄関先で待っていた。あの綱吉が。
理由を聞けば、
「だって楽しみでさ〜!」
なんて笑顔で答えが返って来たけれど、骸には残念ながら理解できなかった。
「今日何かありましたっけ?」
「あれ? 聞いてない? ……これ裏情報だったのかな……」
裏情報。すなわち、綱吉が不本意ながら所属――いや、将来率いることが決められているボンゴレファミリーの諜報部が得た情報のことだった。マフィア世界から離れようと無駄な努力を続ける綱吉にそれが転がって来ることは珍しい。
「ごめん、そういうわけだから言えないや」
ごめんな、と顔の前で手を合わせて、綱吉は申し訳なさそうにぺこりと頭を下げた。
しかしそんな風にかわいらしく頭を下げられても、どうにも骸は釈然としなかった。そもそも骸はマフィアの存在そのものを嫌い、綱吉が些細なことであってもマフィアに関わることを良しとしていなかった。
「すぐにわかるから、そう怒るなよ」
「……それだけじゃないですよ」
「わかってるよ。俺はマフィアのボスになる気は毛頭ない。そんなの骸が1番良く知ってるだろ?」
骸は、綱吉のその真摯な瞳に見つめられると、ないはずの心臓が大きく収縮するような不思議な感覚に陥る。それに綱吉自身は全く気付いていないのだが、それでいいと骸は思っていた。
骸は隣に並ぶ綱吉の腕を引いて、男にしては軽い身体を胸に閉じ込める。
「……なら、いいんです」
鼻孔いっぱいに綱吉の香りを吸い込むと、ほっとする。感じることはできずとも、安心感が満たしてくれる。胸の中の綱吉は抵抗することもなく、ただ宥めるように骸の背中を叩いた。その抱擁に込められた意味など知らず、でかい子供だなぁ、なんて明るく笑って。
「ほら、早く行かないと遅刻しちゃうよ。せっかく頑張って早起きしたんだからさ」
そうですね、と答えながらも、骸は綱吉を離さなかった。綱吉に向ける複雑な感情は、理由がなければ抱擁すら許さないものだから。
結局その朝は遅刻した。
でも、その日に限って担任も遅刻した。それが単なる遅刻ではないことは、その後すぐにわかることとなった。
「六道白蘭です。これからよろしくね〜」
転校生。今日から同じクラス。そんな良くあるシチュエーションで登場した軽い人物に、骸は思わず席から立ち上がって絶句した。
「十年振りかな、骸君?」
見覚えのある顔に見知らぬ笑みを貼り付けて、兄は弟を見つめていた。
2008.8.17
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